私はもともと汗をかきやすい体質ですが、睡眠時にかく汗は普段よりベタついたり、においが強かったりするように感じます。
特に昼寝やうたた寝など意図せず短時間の眠りに入ったときには、冷や汗にも近い大量の汗をかいてハッと目覚めることもしばしば。
寝汗は睡眠状態や睡眠周期に深く関係していて、寝汗をかきやすいタイミングや体勢も存在するそうです。この記事では意外と知らない睡眠と寝汗のメカニズムを解説します。
目次
睡眠周期と眠りの質の関係性
寝汗について理解するためには、予備知識として睡眠周期について知っておかなければなりません。
なんとなく睡眠には周期があるのは分かるけど、どういうリズムで繰り返されているのか、眠りの深さにどんな影響があるのかまで理解している人は少ないのではないでしょうか。
2つの睡眠状態:レム睡眠とノンレム睡眠
私たちが寝ている間も脳の活動は絶えず行われています。睡眠状態は脳波の周波数の違いによって2種類に分けられ、周波数が低い状態が「ノンレム睡眠」、高い状態が「レム睡眠」です(1)。
比較的活発なレム睡眠時の脳波と比べてレム睡眠時は脳波の活動が低下する傾向があり、眠りの深さによってさらに4つの段階が存在します。
ノンレム睡眠の周期は4段階
4段階に分類されるノンレム睡眠は一般的に数字が小さければ浅い睡眠、数字が大きければ深い睡眠を意味し、このサイクルを目覚めるまでに4〜5回繰り返すそう。
- 第1段階うとうとしている状態で声をかけられればすぐに目覚める
- 第2段階眠りが浅く、耳に入ってくる情報を受け取ることができる
- 第3段階中程度の眠りで脳と身体ともに休んでいる状態
- 第4段階眠りが深く、多少の物音では起きない
第3・4段階にあたる「徐波睡眠(SWS)」は周波数が低い脳波成分が原因となり、眠り始め(睡眠最初の1/3)に出現しやすいことが特徴です。中年や高齢者が朝早くに勝手に目覚めてしまうのは、歳を重ねることで徐波睡眠が減少傾向にあるからだと考えられます。
レム睡眠は目覚める前の準備期
ノンレム睡眠の周期が繰り返されている間に、大体90分感覚のペースで現れるのがレム睡眠です。就寝時間に関わらず3〜15時の間に増加すると言われ、レム睡眠時は脳波活動が盛んになったり脈拍が変化したりと目覚めるための準備が行われています。
よく「90分単位で目覚ましをかけるとスッキリ起きられる」と聞きますが、この通説はレム睡眠の仕組みを利用しているというわけです。また、レム睡眠中はノンレム睡眠と比べて眠りが浅く夢を見やすいタイミングであるとも言われます。
睡眠と寝汗のメカニズム
2つの睡眠状態を行ったり来たりすることは体温調節機能に影響を与え、寝汗のかき方も変化します。
寝ているときの汗は「温熱性発汗」
私たちが日常的にかいている汗の種類は大きく3つです。
- 生理的負荷やストレスがかかったときの「精神性発汗」
- 運動時や暑いときの「温熱性発汗」
- 辛いものを食べたときの「味覚性発汗」
寝ている間は「温熱性発汗」が促進されて、眠りが深くなるノンレム睡眠の状態では汗をかきやすいと言われています。
睡眠中は「頭寒足熱」
そもそも寝ている間の発汗は深部体温を低下させることで代謝を下げ、脳や身体全身を休ませるため(2)。
眠りに入るときには手や足先の末梢血管が拡張して血の流れがよくなり、熱を放出します。手足がポカポカするのとは相対的に、放熱によって深部体温が下がる「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」の状態がつくられるのです。
また、レム睡眠中は発汗にいたらせる体温の閾値が高くなるため、汗をかきにくくなります。
昼寝は嫌な汗をかきやすい
しっかり布団に入って眠るときより、ソファで昼寝したときや授業中に居眠りしてしまったときに体が熱くなって寝汗をかきやすいと感じることがありませんか?これは昼寝などの短時間睡眠をすると本来のサイクルが乱れ、体温調節が上手くいかないから。
私もうとうとしてハッと気づいたら手のひらが熱くなっていた汗ばんでいた経験がありますが、目覚めたタイミングが深い眠りに入る前の熱放出中だったのかもしれません。
寝る体勢によって汗をかく部位が変わる
私は普段仰向けで寝ているのですが、寝汗をかいたなと感じるときは大抵お尻や太ももの裏などが湿っていることが多々あります。実はこれにも理由があって、どのような体制で寝るかも汗のかき方に影響しているのです。
人間の皮膚には「半側発汗」と呼ばれる反射が備わっていて、圧迫された部位からの発汗を抑える機能があります。
参考 汗の基礎知識花王株式会社真夏に涼しげな表情を保っている舞妓さんも、胸の高い位置で帯をきつく締めることで首から上に汗をかかないようにしているんだそう。
同様に睡眠中にも皮膚の圧迫は起こっていて、例えば左側を下にして横向きに寝ると身体の左半分からは汗をかかなくなります。私が下半身に寝汗をかきやすいのは、肩甲骨がぴったりと布団に密着することで反射が起こっていたからなのです。
まとめ
睡眠状態と寝汗には深い繋がりがあることが分かりました。今回紹介したのはごく一般的な寝汗の仕組みですが、健康状態やストレスの有無、女性の場合はホルモンバランスの乱れなども睡眠時の発汗に影響します。
- 寝汗は運動時と同じ「温熱性発汗」
- 入眠時は手足から放熱することで脳を冷やす
- うたた寝は睡眠サイクルや体温調節が乱れやすい
- 寝る体制によって汗をかく部位は変化する
[…] 例えば仰向けで寝ているときに下半身に寝汗をかきやすいのも、布団と密着している肩甲骨周辺が圧迫されているからです。 […]